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Date:2014.11.08

司法試験まで、後6ヶ月となった。本格的な試験準備に全精力を投入する期間となる。法科大学院に大きな夢と高い理想を求めて進学して以来、専門的な基礎知識を修得し、具体的事件への法適用による正義を希求する解決方法を学び身に付けてきた。そして、今は将来を見据えて得意の分野も出来てきた。

しかし、受験しようとしている司法試験は「試験」である。出題採点者は受験者の能力判定者であり、圧倒的に優位な立場にある。判例や学説を勉強し、広い範囲の学識を修得してきたが、それを披歴することがこの試験の目的ではない。受験者の専門家としての学識については、すでに法科大学院修了という時点で、法科大学院がその能力を証明している。したがって、試験では出題採点者の意図に従った解答することが求められる。

出題者の意図を探ることは、そう簡単ではないかもしれない。授業を聞いたこともなければ、見たことも聞いたこともない、ただ教科書や論文ないし判決でしか知らない出題採点者の関心やその動向は、詳細に知る由も無い。試験結果発表後に出題趣旨が出されているが、それには採点後に受験生の解答傾向を見た上での採点雑感という意味が加わる。受験生としては、その全体趣旨を理解しようとするだけでなく、その一言一句に出題採点者の意図を見出そうとし苦労する。とはいえ、出題趣旨全体が決定的で重要な資料であると深刻に捉え過ぎない方が良い。出題採点者は、一人の受験生ではなく、採点をした多くの受験生に関わった発言をしているのである。したがって、バラバラの指導が混ざっているのであり、あなただけに対応したものではない。

司法試験に合格するために、まず、法科大学院で学んだ判例および学説理論を思い出してもらいたい。短答式試験は、自説に立っていつも正しいことしか主張ないし表現しない出題採点者が作成したものである。間違えた文章を作成するのが難しいことは、自明の理である。専門家として認められない変な文章や主張を見抜くのが、短答式試験の目的であると考えると、少し気が楽になるのではなかろうか。

次に論文式試験についてだが、私の専門である憲法に限って、次のように考えている。事案分析を問題文にしたがって具体的に確認することから始めて、事案類型の正確な認識を前提に、事案解決のために最も大切な人権や理論を認識することが大切である。出題採点者も、これを基本としているはずである。論ずる範囲は、2点までに絞ることなる。いろいろな論点や見方があっても、試験時間中に解答を完成しなければならないのであるから、2点で十分とされていると考えるべきである。

憲法の出題は、第1問が原告としての主張、第2問が被告の反論を想定した上での私見開陳という形式である。一人の人間が、原告?被告?裁判所の三者の立場を一貫して記述するために、小説家になれとか人格分裂を起こせということを、出題採点者が望んでいないのは当然である。とすると、第1問は、いわゆる人権感覚ないし憲法の専門的感性が研ぎ澄まされているか否かを問うているのである。したがって、問題事件や問題法令により制約される人権の抽出、侵害された利益と人権の保障領域の包摂関係、人権制約の存在と現実、事案における人権制約ないし人権侵害の酷さ(妥当性がない、相当性がない、必要性を超えている、合理的とは判断できない、人権を保障しているとは言えない、制約が行き過ぎであるなど)を問題文に挙げられている事実から正確に無駄なく摘記すれば良いのである。第2問は、まず被告の反論であるが、原告の全ての主張を否定することになる場合もあるが、要は、公益保持のための必要かつ合理的な制約であるという点が中心となる。論理的に短い解答で良いことは繰り返しを避ける試験合理性から当然である。そこで、私見の部分が、受験者の法的解決能力の測定対象になる。何が求められているのか、「事案類型と問題点の正確な理解」(論点?争点)、「事案類型解決のための判断枠組み」(私はかつて「原則ルール」と言っていたところ)、つぎに「事案を解決するための裁判所としての判断基準」(私はかつて「適用ルール」と言っていたところ)、そして「法曹として適切で具体的な判断を行うために事実を正確に判断基準に適用する過程」である。最後には、結論を忘れないようにしていただきたい。採点ポイントは、出題採点者側からすれば、問題文に苦労して検討して盛り込んだ事実をしっかりと使って欲しい、存在するものを利用しあるいは作成もした法文の構造とターゲット条文を正しく指摘して欲しいなどと考えるのは当然である。とりわけ、事実は、原告有利事実(私益を支える事実)と被告有利事実(公益を支える事実)を、両面から見て分析記述し、現代社会における法曹として妥当な判断結果を導出することができれば、法曹としてのスタートを切れると合格点と考えているのではなかろうか。

法科大学院での学びを基本として、司法試験出題採点者の法曹適格性判断基準を信用して勉強するなら、それほど恐れる試験ではない。ただし、科目は多い。弱気にならないでほしい。そして、駒澤大学法科大学院での学びを自信として欲しい。決して諦めないこと、自分の努力を信じることが大切である。私たちは心から応援している。(H)

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